2007年 02月 17日
今回は豊年虫
きょう明日とMの卒業旅行ということでRもEも一緒に信州、戸倉上山田温泉の豊年虫にきています。
せっかく食事するならいい空間で、せっかく泊まるならいい部屋でということで、、、。
この建物は笹屋ホテルの一角にあり、昭和7年に遠藤新の設計による8室からなる数寄屋造りの建物で国の有形文化財に登録されています。
豊年虫は数寄屋建築で修行したぼくにとっては以前から気になっていた旅館でした。
しかも、かの有名なフランク ロイド ライトに師事した建築家、遠藤新(1889~1951)の数寄屋建築なのです。遠藤の作品といえば自由学園をはじめとしたライトの影響をもろに受けた、言わば洋風建築ばかりが思い浮かんでしまいます。
ところが今回訪れた豊年虫は純粋な数寄屋です。
説明書きがなかったら、おそらくだれも遠藤新の作品とは気付かないでしょう。
複雑に入り組んだ入母屋屋根や低い下屋。
ぼくの泊まったのは「蘭」は一番広い部屋。鉄平石の路地を歩き、入り口の板戸を開けると薄暗く広い玄関、そしてふすまを開けると6帖ほどの前室があります。右手には中庭に面した専用お風呂につながる広い廊下。正面のふすまを開けると立派な床の間のある15帖の和室です。その和室からはソファーのおかれた縁側を経て手入れのいきとどいた日本庭園へと続きます。
縁側が1段下がっているのはソファーに座った人と和室の人の目線が合うように考えられた日本で初めての客室とか、いまではごくごく普通の構成なのですが80年前にはかなり斬新な発想だったようです。
基本的には昭和初期の数寄屋なのですが水回りなどには片開きのドアを多く採用しているところなどに洋風建築も設計していた遠藤を感じさせます。
それ以降活躍した現代数寄屋の巨匠、吉田五十八、村野藤吾、吉村順三などの作品と比べると無理して和風を作っているような、少々「粋」が不足しているような印象でした。
作者はもうこの世にいないので、たまには言いたいこと言わせてください(笑)
カメラをもちながらウロウロ、キョロキョロ。建築探訪のへんなおじさんになって内風呂はもちろん、大浴場もその露天風呂も満喫させていただきました。