2012年 10月 15日
共感
ちょうど去年の今ごろ、長野方面へほぼ満席の大型バスで出かけたことが懐かしく思い出されます。
ちょうど、その時は上田にある隈 研吾氏設計の安藤百福センターも見学させてもらいました。
いままで隈さんの建築はいくつも見学させてもらっていましたが、正直、大きな感動はありませんでした。しかし、この安藤百福センターはとても素晴らしく感動させられた建築でした。
そんなことを思い出していたら、週末にスタッフのI君が隈さんによる設計の「石の美術館」に行ってきたとのこと。
ちょうど隈さんの建築の特別展示もしていたようで、そこに出ていた隈さんのコメントを写真に撮ってきて見せてくれました。
それを読んで自分自身への自戒をこめて、とても共感したのです。
その隈さんのコメントが以下のものです。
『うちのダメ所員達に、「石の美術館」の話をよくする。ダメ所員達は、なんでも人のせいにする所員である。「クライアントのセンスが悪い、クライアントに金がない、自分だけが予算のない、つまらない小さな仕事を振り当てられる!」と嘆く所員である。建築家にもっとも必要な資質は、「人のせいにしない」という資質であると僕はかんがえている。なぜなら、建築の設計のときに、人のせいにしていたらキリがないからである。無限に人のせいにするネタが見つかる。予算、法律、センスの悪さーあげていけばキリがない。建築家に必要なことは、人のせいをあげつらうことではなく、にもかかわらず、そのどこにでもあるなんでもない悪条件にもかかわらず、自分が何を建築という形で残せるかに死に物狂いになることである。
人のせいにばかりするお坊ちゃま育ちのダメ所員に対して、僕は「石の美術館」の例を出す。クライアントの白井さんには申し訳ないが、これほど条件のきびしいプロジェクトもめずらしかったからである。古い石蔵を改装して欲しい。でも予算はほとんどない。しかし、うちの石の職人(70歳くらい)は、好きなだけ使て下さいという白井さんの甘言にのって、白井さんの石切り場から切り出した石と、2人の職人さんと、4年間ああだこうだ、すったもんだしながら、石で誰もが試みたことのないディテールを創造し、誰もが見たことがない石の建物ができた。この苦闘を考えたら、おまえらが担当しているプロジェクトなんて、天国のバラ色のプロジェクトだと、所員にはっぱをかけるのである。
石の美術館の後も、白井さんとはいろいろな石を用いて、様々な戦いを試みた。その後も、僕がいろいろな材料を使って、色々な戦いに挑んでいるけれども、白井さんとの4年間で、僕は戦い方、すなわち人のせいにしないことを学んだ。』 隈 研吾
by hosoya_isao
| 2012-10-15 19:36
|
Comments(0)