こんな設計もしたなぁ

先週の日曜日の夜にBSで「惜櫟荘ものがたり」という、建築家 吉田五十八氏設計の岩波別邸の改修についての番組が放映されたので、録画しておきました。
そして、きょうの午後その番組を見ることができました。

この建物は熱海にある岩波書店創業者である岩波氏の別荘で、有名な小説家や政治家などにも縁のある建物とのこと。
その建物の設計をしたのが近代数寄屋の巨匠、吉田五十八氏でした。
改修といってもその工事はかなり大がかりで、ほとんど軸組の形に戻してから補強をしながら復元するという、文化財建築物を保存する手法に近いものでした。
たまたま隣の敷地に出会った小説家である佐伯泰英氏がこの別荘を購入し改修したというもの。

その設計は吉田事務所の元スタッフである板垣氏。工事は当時も施工を担当した水沢工務店です。
吉田式デティールにのっとり、外部の建具は引き込み建具となっていて、すべての開口部を最大限に開放できるようになっています。

実はボクは大学を卒業してから、吉田五十八事務所のスタッフであった寺井徹氏のところで修業をさせていただきました。
そこで、ボクは吉田五十八式ともいえるディテールをたくさん学ぶことができたのです。
引き込み建具をはじめとして、八掛枠、細い中鴨居を吊る手法、埋め込み照明器具などなど。
ほんの2年9カ月という短い期間ではありましたが、得ることは盛り沢山あり、本当に充実した日々でした。


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修業を始めて2年が過ぎたころ、友人から親戚の家で住宅の建て替えを考えているので手伝ってほしいという話が舞い込み、まだ資格もなかったボクでしたが、これはチャンス!と修業をしていた事務所を辞め、その住宅の設計をさせてもらうことを決断しました。
結局2年9カ月の修業を終え、12月末日に退職したのですが、幸いにもその直前に1級建築士の合格通知も届いたのです。

そして勢い勇んで設計をさせていただいたのがこのM邸です。この建物がボクの設計人生スタートの建物です。
当時、ボクはまだ26歳の若造だっただのですが、その施主の期待に応えるために必死で頑張りました。
何かにつけ、吉田五十八作品集やディテール集をいつもひっくり返してはそれらを参考にして設計を進めていたようです。
平屋建て、100坪近い木造数寄屋造りの住宅で、ボクなりに学んだ吉田ディテールが各所に生かされています。

いまもたまに、この建物の前を通るのですが、34年たったとはおもえないほど、きれいな姿で使っていただいているのは設計者として嬉しい限りです。

テレビを見ながら、やっぱり数寄屋はいいなぁ~と改めて感じたのです。
ただ、かなりの予算を必要とするのは、今も昔もかわりませんがぁ、、、、。

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by hosoya_isao | 2013-06-01 13:40 | Comments(0)